なよなよブログ

旅行と書評と音楽と、仮住まいの寄留者

ロシア旅行記②シベリア鉄道7日間の旅

    友人や知り合いに「ウラジオストクからモスクワまで7日間かけて行ってきた」というと必ず目を丸くされる。確かにそういう体験だったかもしれない。昔からお世話になっている近所の老医者には「物好きだなあ、俺なんて絶対無理だ」と言われた。彼は学生時代に友人に誘われた事があったらしいが、断ったのだそう。

    まあ昔の方がはるかに車内環境悪そうではある…笑

 

    人生に一度は乗ってみたかったシベリア鉄道。教科書でしか知らなかったものが、身近になる瞬間の連続だった。

 

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[↑シベリアのどっかw具体的な場所は残念ながら覚えていない…]

 

    深夜に車内に乗り込んだその翌朝、目が覚めると幻想的な風景が広がっていた。ウラジオストクから走り続けて約8時間経過していた。

   とりあえず朝ごはんをふたりで食べて、また一眠りしてしまう。そのあと昼過ぎに起きて、ご飯を食べる。寝てばっかりのぐうたらな旅の始まり…笑

 

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[↑シベリアの一風景。とっても幻想的]

 

 

 最初の主要駅ハバロフスクに着いた。シベリア鉄道では長い時間停車する駅が一日に数駅あって、ホームにキヨスクがあれば乗客はそこで食料や飲料水などを買い込む。だけどハバロフスクには見たところ何もなく、外の空気だけ吸って車内に戻る(車内は空気がこもるので新鮮な空気を吸うためだけでも、降りてみるのがいいと思う)。

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[↑ウラン=ウデ駅(モンゴルの首都ウランバートル行きの電車に乗り換えられる)のキヨスク]

 

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[↑こんな感じのキヨスクも]

 

 日本のキヨスクと違って果物やヨーグルト、パン、飲料水やジュース、インスタントの食事系などいろいろ売っている。

 

 ハバロフスクウラジオストクと違ってなかなか面白い街並みだった。私が思わず「何だか(テレビでみるような)北朝鮮みたいな街並みだなあ」と言ったら妹が「ソ連時代の建物とか多く残っているのかもね」と言っていた。

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   ここから乗客がまたゾロっと乗ってきた。日本人と大差ない風貌の年配男性がロシア語を流暢に話しているのがまた不思議な光景だった。おそらくウズベキスタンの人だろう。

 

 

 車内で一つ面白いこと(?)があった。車内販売カートが通り過ぎようとしていたので水が欲しかった私のために妹がミネラルウォーターを買ったんだけど、スーパーで買うより2倍ぐらい高くて、とりあえず100ルーブル札を差し出したらおつりが返ってこなかったのだ。妹がキレて、それ以来カートが通り過ぎるたびに「ぼったくりカート」と呼んでいたw

 

    確かに見渡したところ、現地の人たちもカートからあまり物を買ってはいないみたいだ。ぼったくりカートだと知っているのかもしれない。だから水を買うなら途中下車して駅のキヨスクで買うのが無難だろう。それでもスーパーよりちょっとだけ値段はするが。それにキヨスクはちゃんとお釣りを返してくれる!

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[↑「バイカル湖の水」と書いてある。この水が一番美味しかった!]

 

 

 そのあと、何個目かの小さな駅でロシア人のおばさんが私たちのベッドの下に乗車してきた。小学校教師らしい。その人は深夜過ぎに降りる予定らしく、私たちと少し話してから横になって寝始めた。私たちは邪魔にならないように、空いてる近くのところに座って車窓を見たり、音楽聴いたり、お茶飲んだり、小声でおしゃべりしたりしていた。

 

 

【注意事項、覚えておいた方が良いこと①〜⑥】

①乗客は熱湯がいつでも出せるのでティーバッグさえ持ち込めばお茶は飲み放題、カップラーメンも持ち込めば食べ放題。マグカップも係のお姉さんに言えば貸してもらえる(※後述するが、基本的に英語は通じない)

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[↑食事の一風景。右に写っているのは借りてきたマグ]

 

だけどカップラーメンだけを7日間も食べてるのは、さすがに栄養面が心配なので果物やドライフルーツ、ナッツや野菜たっぷりのレトルト味噌汁、パン、チキラーとそれに入れる乾燥わかめ、等々持ち込んだ。色々な人がいる車内だし、風邪をうつされる心配もないわけじゃない。そんな時にビタミン不足だと余計心配だ。これからシベリア鉄道乗ろうか考えている人は注意した方がいいかも。ただ電源の心配はしなくても大丈夫。上のベッドの人には一人につき2つずつUSBを挿して充電できる場所があり、下のベッドの住人にはアダプターを挿して充電できる場所が1つずつある(妹が一人旅をした数年前まではそうではなかったようだ)

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[↑上の段のベッドにあった、USBを挿すところ]

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[↑下の段にはこれが]

 

 

②電源の心配が要らない代わりに、電波が届かず圏外になる率が高いという難点がある。ポケットWi-Fiを持っていってもなかなか鉄道内だと使い物にならなかった。

ただ駅とその周辺は電波がいいので、日本の友人たちと連絡とったりSNS使ったりしたい時は、駅に着く頃を見計らって使うようにした。ただ稀に駅周辺以外でも電波が良かったりする。

(だから死ぬほどやる事がなくなった時のために本とか雑誌とか持っていったほうがいいかも!)

 

③車内には乗客向けのシャワー室がない。ウラジオストクからモスクワ行く人は約7日間洗髪もできないし身体も洗えない。顔や手を洗うので精一杯だ。潔癖な人からしたら気が狂いそうな旅だろう。私はそこまで潔癖症ではないが、それでも洗髪ができないのは本当につらかった。

    そして一車両につきトイレが2個しかないのであまり長居するとイライラした乗客やトイレ掃除のお姉さんが容赦なくトイレのドアを叩いてくる…!さすがおそロシア

 

④車内にいるときはサンダルがあると便利だ。一日中、外用のブーツを履いているのはキツいし、リラックスできないだろう。

 

⑤私の主観も多少は入ってるかもしれないが、ロシア人は日本人以上に英語が喋れない人が多い印象だった。”boyfriend”という簡単な言葉も知らない人がいて驚いてしまった。乗客にはシベリア出身の若い男の子がいて、その人は何故か英語が喋れたし、ウラジオストクで泊まったホステルのスタッフには、色々な国から来た観光客が多いせいか英語が話せる人がいたが、そういう人はかなり稀だそうだ。

妹は旅行会話には困らない程度のロシア語はできるが、私自身は全くできない。だけどここに来て最低限のことは強制的に覚えるはめになった。それでも数字は1と2しかわからないし、そうなるとだいたい妹に任せるしかない。

   

⑥ゆっくり過ごしたい人は上ではなく下のベッドを予約した方がいい。上では食事はまず無理だし(下に乗客がいない場合は下でちゃんと食べられる)、パソコン開くにも本読むにもかなり無理ゲーな姿勢を強いられるので厳しい。あと大柄な人に上は絶対オススメしない。

    シベリア鉄道の旅は最初は乗客も少なくそれなりにテンション上がるが、だんだん増えてくるとそうも言ってられない。私たちのような上のベッドの住人は、下の人がいるときは自由に机に向かって座れなかったり車窓を眺めることができなかったりするので、だんだん嫌気がさしてくる。もちろん食事の時くらいは下に降りざるを得ないので降りて食事はするが。

 

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[↑車内。一見、椅子とテーブルに見えるがこれも立派にベッドになる]

 

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[↑上のベッドから見た景色]

 

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[↑車内。なんとも言えない雑然とした感じ]

 

【2日目】

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 2日目にもなると雪原が多くなってきた。キヨスクで5リットルくらいの水とサラミ、リンゴ、オレンジ、パン、レトルトのマッシュポテトを買う。

 

    夕方に若いカップルが下の2つのベッドに乗り込んできた。挨拶しただけで彼らがどこまで行くのか分からず。カップルということもあって若干聞きづらかったし、向こうも全然こちらに興味がないようだった。

 

    シベリアの風景見ながら気づいたことがある。月がやたらに明るい。夕日みたい。あと星がよく見える。星には全く詳しくないけどオリオン座を見つけることは私にも容易だった。

 

【3日目】

 朝起きたら、ウラジオストクで買ってから上の荷物棚に置いていたドレッシングと漬け物から漏れて私のベッドに滴り落ちて悲惨な状態で、パニックに…!!

 

    仕方ないからとりあえず、汚れた枕カバーとシーツだけ剥がして顔を洗ったりする。汚れたところは臭うので、持ってきた香水をぶっ放して、それでご飯食べてから新しいのに変えようと思った。

 

 そうこうしているうちに、朝の停車駅からおじいちゃんと若いにいちゃんが、昨日のカップルと入れ替わりに乗ってきた。こちらはかなり気さくで、下のテーブルで気持ちよくご飯を食べることができた。おじいちゃんはウラン=ウデ駅で、にいちゃんはイルクーツクで降りるとのこと。

 

 おじいちゃんに「お前は芋でも食ってもっと太るべきだ!ガハハハ!」と言われながらジャガイモのおかずを頂き、プルーンとオレンジ、ビスケットを食べて昼まで一眠り。の前に、若いにいちゃんがシーツを変えるのを手伝ってくれてめちゃくちゃ助かった。にいちゃんスパシーバ!

   この二人とはかなり仲良くなって一緒に記念撮影もした。しかもそのにいちゃんは私たちのために、何と、あのぼったくりカートからチョコレート1枚買ってくれた!感激!

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[↑このシリーズの1枚を頂く(画像は借用)。頂いたのはここには載ってない普通のミルクチョコレートだったがどれもとっても美味しそう!]

 

 

 その後は14時過ぎに15分だけ停車する駅があり、発車してから昼ごはんを食べる。

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[↑キヨスクで買ったインスタントのマッシュポテト(のようなもの)と干し魚、日本から持ってきた味噌汁]


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[↑ロシアのサラミ。サラミがこんなに美味しいモノだとは露ほども知らなかった…!クセになりそうな予感]

 

 

 

 車内を何となく歩きながら見渡してみると、色々な人がいた。編み物をしているおばちゃん、数独をやっているおじいちゃん、パソコン開いて延々と映画鑑賞&ゲームをし続けている若いゲーマー(一生やってるんじゃないかって勢いw)、韓国人の女の子ふたり組、労働者風の装いのウズベキスタン人、ボーッと車窓を眺めている人、寂しいのか15分に1回は誰かと通話している同じくウズベキスタン人のおばちゃん、音漏れなどお構い無しにイヤホンを耳に入れてノリノリで首を振ってる白系ロシア人のおばちゃん、などなど。

 

 ウラン=ウデで今朝乗ってきたおじいちゃんが下車し、通路を挟んで向かいのところに赤ら顔のおじさんが乗ってきた。どうやら酔っ払いらしい。その上、持ち込んだビールを飲もうと取り出して食事しながら飲んでいた。(ちなみに車内では飲酒は厳禁。バレたら問答無用でつまみ出されるらしいw)

 

 彼は私たちにビールをすすめてきた。「ちょっとだけ」と言ったのにグラスに並々注いできた。車掌にバレたら怖いし、さすがにふた口しか飲まなかったが。でも意外と美味しかった。

 

 そんなこんなでなかなか賑やかに1日を楽しんだ。ただ夜のうちにバイカル湖を通り過ぎてしまったらしく、湖をこの目で拝むことは叶わなかった。残念。

 

【4日目】

 未明にイルクーツクから、また入れ替わりに乗客がふたり乗り込んできて(バスキールという少数民族出身らしい)、皆寝ているのにもかかわらず、騒がしくドタバタとお構い無しに荷物整理していて起こされてしまった。そのせいで11時半くらいまで寝てしまう。遅い朝ごはん食べて、また横になる。

 

 通路側にもイルクーツクから乗ってきた人がいるのだけど、ずっと寝続けている。私たちは「三年寝太郎」と呼んで爆笑していたら夕方ごろにムクッと起きだしてきた。どうも今日の夜にクラスノヤルスクで降りる予定らしく、それでずっと寝てたらしい。

 

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 クラスノヤルスクに止まったので、そこのキヨスクで水とインスタントのマッシュポテトを少し買う。なかなか都会的な駅だった。それなりに大きな都市らしい。そのあとご飯を食べて、少し読書したりお茶飲んだりした。

 

 いつのまにか腹筋が痛くて仕方ない状態に気づいた。上のベッドに登り降りするのが私には意外とキツかったみたいだ。

 

【5日目】

    朝9時過ぎにノヴォシビルスクに着いた。近くに空港があるからか、飛行機をよく見かけた。徐々にモスクワに近づきつつある。

 バラビンスク駅に途中下車してキヨスク向かったら物売りのおばさんおじさんがめっちゃしつこく勧誘してきた。「イクラのパンだよ〜いかが〜!」と言われてイクラ好きの私は釣られて買ったが、食べてみるとイクラ「入り」ではなく、イクラ「味」のパンだった。私個人としては微妙で、あまり美味しいとは思えなかった。

 

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[↑おそらくイクラのパンを買った駅]

 

 

    オムスク駅でまた降りてフルーツを買い足し、ヨーグルトも買ってみた。こちらは美味しかった。

    通路側に誰もいなかったので私たちはそこで夕食をし、夜遅くまで座って語り合いお茶も飲めた。明後日にはモスクワ着くと思うと嬉しい。

 

【6日目】

    朝5時ごろにバスキールの人たち含め多くの乗客がエカテリンブルクで降りていった。どうもウラジオストクからモスクワまで行く人たちは少数派のようだ。

 

    この日は朝から吹雪いていた。シベリア鉄道の走り始めはあまり雪を見ることもなかったけど、内陸部に近づくと雪原を見ることも吹雪を見ることも増えた。

 

    朝起きたら机にマフィンがポンと置いてあった。バスキールの人たちが私たちのために置いていったみたいだ。彼らがマフィンを食べているのを見たことがなかったし、きっと誰かにあげようと思っていたのだろう。妹曰く、ロシアの人たちはとにかく他人に食べ物をあげたがるらしい。それでいてこちらが何かおすそ分けしようとしてもあまり受け取ってくれない。不思議な人たちだ。

 

 そうそう、約1週間、電車に揺られ続けたが最初から最後まで酔うことは全くなかった。新幹線でもよく酔ってしまう方だが、今回は不思議と経験しなかった。

 

 

 そしてこの日は午前中に無口なおじいさんが突然やってきて、聖母子像が描かれたイコンのカードとブレスレットを売りに来た。どうも耳の聞こえない人らしい。100ルーブル出して買ってみた。日本で売っているよりは安いだろう。ちなみに私はプロテスタントのクリスチャンなので、マリア様を崇拝しているわけでは全くない。でもロシア土産に良いだろうと思った。


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[↑イコンのカード。表と裏]

 

 そうそう、車内でMacbook Proを使ってブログの草稿を書いていたら、小学生男子に話しかけられた。ちょうど妹がぐっすりお昼寝をしていたのでかなり焦った。でもなんとなくは分かった。

 

小学生「それiPad?」

私「ううん、Macbook Proだよ(どう見てもパソコンだろw)」

小学生「いくらぐらいしたの?」

私「…おじいちゃんに譲ってもらったものだから分からないや(英語)」

小学生「…???」

私「あ、英語、分かる…?」

小学生「ううん…」

 

(会話終了wwwww)

 

 でも私個人としては、話しかけてきてくれたのがすごく嬉しかった。数字言えなくても何言われたのかはだいたい分かったし、あっちも少し微笑んできてくれたから心があったかくなったのを感じた。そして何より子ども可愛い!!

    日本の子供だったら絶対に知らない他人に話しかけたりはしない気がする。せいぜい無表情で見つめるのが関の山だろう。不審者を警戒する気持ちは良く分かるが。それが別に悪い事だとも良い事だとも思わないけど、何となく違いを感じたのは事実。

 

    夕方6時ごろにおばあちゃんが乗ってきた。分からない言葉を連発されて、妹が対応に苦慮していた。おばあちゃんは表情が薄かった。たまに笑顔を見せるとこちらも安心する。糖尿病を患ってるらしく薬と注射を持っていた。

 

    こういう時もっと自分がロシア語分かればいいのにと思った。一人で退屈そうだった。おばあちゃんは身体が不自由でトイレに行くのもやっとだった。モスクワにいる娘に会いに行くらしいのだけど、その身体で本当に娘に会いに行けるのか疑問だった。まあ、迎えが来るのかもしれないが。

 

【7日目】

    いよいよ今日はモスクワに到着!午前中に到着予定なので、少し早めに起きて荷造り&外へ出るので着替えなどをして準備。

    車内にいるときはインスタント系の乾物ばかり食べていたので、「ちゃんとしたご飯が食べたいね(´;ω;`)」と妹と言い合ってた。「モスクワに着いたら、たらふく美味しいものを食べようね」と約束。

 

    とはいえ、シベリア鉄道の旅はなかなか面白かった。正直に言えばモスクワに着いた頃は、もうシベリア鉄道には乗らなくてもいいと思ってた。ただ、写真を今になって色々見返すと本当に素敵な景色、日本の大都会にいるとおよそ見ることができない地平線、家が一軒も見当たらない車窓が数分も続くこと、こうしたものが懐かしく思い出される。

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[↑やっとモスクワに上陸!]

 

    身体が不自由そうだった例のおばあちゃんはその後、若い男性(おそらく息子さん?)が迎えに来てくれて無事バイバイした。めでたしめでたし。

 

    さてさて、これからモスクワ旅の始まり〜〜